一応自転車系ブログのつもりなので、たまには自転車ネタを。
この4月下旬に発売になる、GDRの新型フレーム
「METEOR(メテオ)」の試乗会に行ってきた。
今乗っているMadoneを購入するときに、対抗馬として最右翼に挙がっていたのが旧型のメテオスピードだった。当時はツールドおきなわなどのロングディスタンスレースで最後まで脚が残せるフレームが欲しかったのと、試乗した時の印象がLookに近いものだったのとで購入を検討していた。
ただし、新興メーカーであるにも関わらず海外トップブランドと変わらぬ価格にやはり二の足を踏んでしまい、結局は無難な路線でMadoneを選んだ。Madoneの走りには今もってほぼ不満を感じていないが、時にLookに感じていた「しなり」が恋しくなる。
Lookですら695以降はしなりを捨ててしまった今、カーボンフレームでしなりを残した数少ないメーカーの一つであるGDRが満を持して放つ新型メテオに興味が湧かないわけがない。
試乗会の日程を見ていると、生憎関東圏ばかり。当分関西圏での試乗会はないのか・・・と思っていたところ、急に4月5日(土)の試乗会が案内された。
もともと午後から予定がありタイトなスケジュールだったが、なんとか時間を確保して試乗してきた。
場所は、あびこ筋を南下し、大和川を越えたすぐのところにある自転車ショップ「ティファーレ」さん。どうも最近出来たお店のようだ。
試乗会開始の10時に少し遅れるぐらいに到着したのだが、幸いにまだ他のお客さんはおらず、530サイズのメテオに早速試乗させていただいた。
ペダルは普段通りSpeedplay、ホイールはキシリウムSLS。
カラーは標準色の、マットブラック×グロスブラック。
ほぼホリゾンタルだった旧型メテオスピードと違い、わずかにスローピングしている。それでも、昨今のmadoneのような醜い姿ではない。
ヘッド〜ダウンチューブにかけてはかなりのボリュームを与えられているが、基本的にはチューブ径は細めで、古き良き時代のフレームの面影を残す。
見た目は合格。
お店の場所が大和川のそばということもあり、試乗は大和川沿いの平地を内環状まで往復した。時間にして15分〜20分程度。
走り始めた瞬間の第一印象は「ずいぶん普通なフレームになったなあ」。旧型MSはひと漕ぎすれば分かるぐらいに強烈にバネ感のある独特な乗り味のフレームだったが、新型はブラインドテストしたら他のメーカーと区別できないほどに普通。少なくともフニャフニャとすら評された旧型とは全然違う。
アッセンブルされたGDR謹製のカーボンステムとカーボンハンドルの剛性もかなり影響してるとは思うが、ヘッド周りの剛性感はMadoneのそれを上回っているように感じた。意地悪にハンドルをこじってやろうとしてもビクともしない。
ヘッドからダウンチューブ、BBまでが一体成型されたパーツを用いており、メーカーの方いわく「人間でいうところの体幹」をイメージしてかなり剛性を与えているようだ。このあたりの思想はSpecialized Tarmacなんかの思想に近いのかもしれない。まあ、Madoneも似たような形状をしているし、このあたりは流行りを取り入れたものになっているのだろう。
BBはPF86を採用している。GDRおまえもか、と思わず嘆いてしまう、プレスフィットBBの採用。メーカーの方と話をしている時に、PFと聞いた私の表情が曇ったのを敏感に察知されたのか、こうおっしゃっていた。
「PFタイプのBBが評判悪いのは、フレーム精度が悪いからであって、規格の問題ではない」
「うちのフレームに関しては、PF BBでも音鳴のクレームが来たことがない」
かなり強気な発言だ。PF BBのシェルそのものはもちろん精度を出して作られているのだが、フレームに組み付ける際の手際が悪いせいでシェルが歪み、音鳴の原因になるんだとか。そう言われると、確かに自分のMadoneでは音鳴なんて気になった試しがないが、相対的に安価なCAAD10ではBB周りに結構気を使わされた覚えがある。 GDRの方の話を額面通りには受け取れないが、あながちウソでもあるまい。
そのBBであるが、すこぶる気持ちよくクランクが回る。ガタツキは全く感じられず、Madoneとの差異は感じなかった。 さすがに強気な発言をするだけはある。
体幹部分が固められている分、大きな振動はガンと伝わってくる。が、細かなコツコツした振動はほとんど感じない。また、減衰は非常に早い。Madoneに初めて乗った時に感じたシルキーさほどではないが、かなり上質な乗り心地。
メーカーの方によると、ラグの接合部が減った分、どうしても乗り心地は悪化してしまうが、トップチューブの剛性を旧型よりも落としてあり、ここで乗り心地の改善を図っているそうな。
今回は残念ながら登りやワインディングが無かったので、登坂性能やコーナリング性能ははっきりしないが、ヘタレなりにもがいた印象を。MAXでも1000W行かない人間なので、話半分に。
自分の乗っているMadone6sslはその後に発売されたMadone7に比べると随分柔らかめのフレームとされているようなのだが、それですら全力でもがくと自分の脚が車体に負けてしまう感覚が出てくる。そうなると、踏力が跳ね返ってくるのかクランクの回転に淀みが発生して、キレイに回るという感覚が乏しくなってくる。
それと、軽量フレーム故か、車輪が路面を掴みきれずトルクが抜けてフワフワしているような感触があり、一種の危うさを覚えることもある。
新型メテオは、この辺りの不満は全く感じなかった。
旧型MSのユーザーさんがよく使っておられた表現だが、どこまででも伸びる感覚、それを新型でも味わうことができた。これぞ「しなり」なのだろうか?自分の回すリズムに合わせてくれるのか、限界まで踏み込んでも脚に跳ね返ってくる感覚がない。
Look595の時は、一瞬の「タメ」があった後にギュンっと加速するようなイメージだった。それが「しなり」だと思っていたし、旧メテオに試乗した時も似たような感触があったように思うのだが、新型の「しなり」はそれとはまるで違うものだった。
踏力はダイレクトに駆動系へ伝達されていくが、リズムの補正・ロスの発生を「しなり」が調節してくれている、という表現がピッタリ。
特定のパワーバンドやペダリングのリズムを外すとダメっていう狭小なものではなく、どんなペダリングでも受け止めてくれるような懐の深さを感じた。
それと、車体の安定性にも驚いた。フレーム重量950gと超軽量フレームではないのだから当たり前かもしれないが、ハンドルを意識的に振りまくってダンシングしても路面への追従性が極めて高く、ブレない。試乗車ではあったが、コケたら最悪(orこれ幸いとばかりに?)買い取ったらええわ、という気持ちで遠慮なく全開でモガいてみたが、少なくともMadoneよりは吹っ飛ぶような怖さを感じなかった。
これは振動の減衰とも関係しているのかもしれない。新型メテオのウリの一つが、製品の製造精度の高さだという。マスプロダクツとしての限界レベルまでチューブの精度、チューブ同士の接合の精度を高めることで、パワーロスを抑制し、また振動の減衰を図っていると言っていた。
CannondaleのEvoでもチューブ内部のバリの少なさをアピールしていたように記憶しているが、あちらはそれによって無駄な重量を減らしている、というのが主眼になっていたようだが、こちらは重量軽減ではなく(というか重量については全く触れていなかった)乗り心地や走行性能への影響をアピールしていた。
試乗が終わった後に、ヘッド〜ダウンチューブ〜BBを一体成型した「スーパーコア」というモノコック部分の試作パーツを見せていただけたのだが、チューブ内部のバリは試作品とは思えないレベルに少なかった。
カーボンの厚みもLook595ほどではなかったものの、万が一の落車でも大丈夫だろうなと思えるレベルではあった。
また、これはあまりおおっぴらにアピールしていないことらしいが、カーボンレイアップの最外層にガラスフィルムによるコーティング層が用意されており、マスプロダクツのカーボンシートではどうしても回避できない品質のバラ付きを補正することができたとのこと。また、耐衝撃性と云う意味でも、このシートがあるおかげでカーボン層へのダメージを軽減できるそうな。
もう一つ、メーカーの方に聞いてみたかったのが、旧型では「スピード」と「ランチ」の2種類を分けていたのに、今回は統合して一つの「メテオ」になった理由だった。
今となっては何とでも言えるだろうし、穿った見方をすればラインナップを絞って在庫を抱えたくないっていう思惑もあるだろうけども、一応メーカーの方に聞いたことを記載しておく。
旧型メテオシリーズの発売時のカーボン技術では、「スピード」に求めた「長距離レースでも脚にダメージの残らないしなり」と「ランチ」に求めた「ヒルクライムで必要な瞬間的な反応性」とを両立させることができなかったらしい。
より正確を期すと、その当時のレベルでこれを両立させようとするとどっちつかずなバイクになってしまって製品としてのクオリティが下がってしまうという判断の結果として、2種類を用意したとのこと。
今回、ラインナップを統合したのはこれを両立させる技術的な目処が立ったからだ。
この旧型のフレームの特性を如実に反映する事実として、旧型はホイールをかなり選ぶフレームだったらしい。「スピード」はリム外周が極端に軽い超軽量ホイールを苦手とし、逆に「ランチ」はそういうホイールが最適だったという。
ラインナップの統合にあたり、ホイールのアッセンブルによる乗り味の変化を抑えるというのも開発のひとつの焦点になったらしい。
GDRには東レのカーボン繊維を使った「T800」というプレミアムモデルが存在するが、そういう特殊なカーボン素材ではなく一般に流通している素材を用いて、現状作りうる「最も汎用性が高いレース用マシン」として開発されたのが新型メテオ。
わずかな時間の試乗ではあったが、その狙いの一端は垣間見えたような気がする。
実に物欲をそそられるマシンだった。